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生活保護基準引下げ違憲処分取消等請求訴訟を提訴しました

福岡での提訴

2013年8月から始まった生活保護基準の引下げに対し、福岡でも103名が原告となって、今年3月16日、福岡地裁に提訴しました。

生活保護基準の引下げ

2013年5月、厚生労働大臣は生活保護基準を改定し、同年8月1日、2014年4月1日に生活保護費が減額されました。本年4月1日にも減額が予定されています。

これは、2013年1月27日に厚生労働省が出した「生活保護制度の見直しについて」という文書に示された生活保護費削減計画に基づくもので、生活保護基準を大幅に引下げて3年間で約670億円の生活保護費を削減するというものです(別に、期末一時扶助が約70億円削減されます)。

この問題は生活保護を受けている世帯の問題にとどまらない

生活保護基準の引下げは生活保護で暮らす世帯だけの問題にはとどまりません。生活保護基準を前提とする他の制度があるからです。

たとえば、住民税非課税世帯は住民税を免除されるだけではなく、国民健康保険料や高齢者の介護保険料の減免などの措置が受けられます。この住民税非課税世帯の基準は生活保護基準を前提として定められます。そのため生活保護基準が下がれば、これまでと収入は変わらないのに、突然、住民税非課税世帯の対象からはずれて住民税の負担を求められたり、国民健康保険料等の減免措置が受けられなくなったりすることが生じます。

また、生活に困っている世帯の子どもたちに学用品や修学旅行の費用などを支給する就学援助も生活保護基準を前提として基準が定められます。そのため生活保護基準が下がれば、やはり、これまでと収入は変わらないのに、突然、就学援助が受けられなくなることが生じます。就学援助を受けている子どもはこの10年で2倍に増えていて、現在、全国で157万人、全国の小中学生の6人に一人が受けています。この子どもたちに直接影響が出ることになります。

そのほかにも最低賃金も生活保護基準と連動しています。今でも低すぎる最低賃金がさらに低くてもよいということになれば、ワーキングプアを拡大し、非正規で低賃金の労働に苦しむ人々をさらに苦しめることになります。

このように生活保護基準の引下げは生活保護で暮らす世帯だけでなく、低所得で生活する世帯にも深刻な影響を与えることになります。

本件の生活保護基準の引下げは憲法25条違反

生活保護制度は私たちがどのような状況にあっても、健康で文化的な最低限度の生活が送れることを保障する憲法25条に基づく重要な制度です。

ですから、生活保護基準の引下げはこの憲法25条の趣旨に照らして、最大限慎重な検討と正当な理由が求められます。

しかし、以下のとおり、本件の生活保護基準の引下げについて、厚生労働省は慎重な検討は全くしていませんし、引下げの理由とされるものも到底引下げを正当化する理由とはなり得ません。

まず、生活保護基準について専門的かつ客観的な検証を行った学識経験者から構成される生活保護基準部会(厚生労働省の社会保障審議会の一部会です)は生活保護基準の引下げに対して慎重な配慮を求めた報告書を、2013年1月18日、厚生労働省に提出していました。ところが、厚生労働省は、先に述べたとおり、そのわずか9日後の同月27日に「生活保護制度の見直しについて」という文書を発表して、生活保護基準の大幅な引下げをすることを明らかにしたのです。到底、慎重な検討がなされたとは言えません。

むしろ、本件の生活保護基準の引下げが、当時の生活保護バッシングを追い風にした自民党の生活保護費の1割カットという選挙公約の実現や社会保障制度全体の改悪という政治的な意図に基づいて強引にされたものであることを明白に示しています。

次に、厚生労働省がいう生活保護基準引下げの理由は要するに物価が下落したというものです。しかし、その物価の下落の内容はパソコンなど家電製品の下落を主な内容とするもので、低所得者世帯、生活保護世帯にはあまり関係のないものです。むしろ最近の円高に伴う物価上昇や消費税の引上げは低所得世帯、生活保護世帯の生活を圧迫しています。とても本件の生活保護基準の引下げを正当化できる理由にはなり得ません。
これらの点は裁判の中心争点ですので、今後詳細に明らかにしていくことになりますが、原告・弁護団としては明らかに憲法25条違反と考えています。

戦後最大の不服審査と裁判

これまで述べてきたように無茶苦茶な今回の生活保護基準引下げに対して、生活保護受給者からの不服審査の申立件数は全国で1万件を超えました。

そして、福岡での提訴を含めて全国で20の都道府県で裁判が起きており、その原告の数は700名になろうかというところです。今後も提訴が予定されています。

これは不服審査の数としても、裁判や原告の数としても戦後最大と思います。

人の命や尊厳をあまりにも軽く見る今の政府に対する怒りが全国から湧き出ていると言っても過言ではないと思います。

命に格差はない

命に格差が生まれてくるときに戦争の影が見えてくると思います。暗黙のうちに死んでもかまわない命を認めない限り、戦争はできないからです。

この生活保護引下げの動きと併せて、戦争する国に向けた動きが進んでいることは示唆的です。我が国の憲法が25条と併せて9条を規定している重みを今、心から私たちは受け止め、政府に突き付けていく必要があります。

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