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東風 第19号(2009年8月)

巻頭言

「平和」とはどんな状態でしょうか?

立命館大学の安斎郁夫教授によれば、人間の能力が豊かに花開くのを阻む社会的要因を「構造的暴力」と呼び、平和は、戦争や殺人、いじめのような「直接的暴力」のない状態だけではなく、飢餓、貧困、差別、社会的不公正、人権抑圧、環境破壊、教育や衛生の遅れなどの「構造的暴力」のない状態を含むものだそうです。

この定義からすれば、今の日本は残念ながら、とても平和的とは言えないのではないでしょうか?

現在も、この地球では4秒間に1人が飢餓で亡くなっています。1年間で約800万人の人が餓死しています。他方、食料自給率が4割に満たない日本では大量の食材が食べられることなく廃棄されている現実があります。最近、賞味期限切れが迫った弁当やおにぎりを値引きすること(「見切り販売」)を制限することは、独占禁止法の優越的地位の乱用に当るとして排除命令が出ましたが、「見切り販売」を認める方向ではなく、ロス原価の15%を負担するという方向、即ちお金で解決しようとしているようです。おかしな話です。

地球温暖化対策について、麻生首相は、2020年までの日本の温室効果ガス削減の中期目標を「05年比15%」と発表しました。しかし、削減目標は、産業界10%に対して一般家庭25%であり、削減対策として太陽光発電の普及や家電購入のエコポイント、エコカーの普及などを挙げています。麻生首相の環境政策は産業界優先で、専ら国民に負担を押し付けるものです。国民ひとりひとりが、温暖化対策で工夫し努力することは大切なことですが、国が、環境政策として大量生産・大量消費の社会構造、産業構造の転換を図る努力をしなければ、環境破壊を食い止めることはできません。

地球環境保護からしても、国民の権利行使の機会が一日でも早く来ることを期待します。

紙面について

特集
社会へ出ていく君へ―働く権利 休む権利 闘う権利―
発行
2009年8月
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東風 第19号
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