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東風 第25号(2012年8月)

巻頭言

「幸福度ランキング」。米世論調査機関ギャラップが155ヶ国・地域を対象に1位はデンマーク、続いてフィンランド、ノルウェー、スウェーデンと上位4カ国を北欧の国々が占めています。日本は81位。また、イギリスの大学研究者が各種国際機関(ユネスコ、WHOなど)の発表済報告書を分析した結果でも1位はデンマーク、10位以内にフィンランド、スウェーデンが入っています。日本は90位。これら上位国は世界でも有名な福祉国家です。ギャラップの分析では「上位にランキングされた国々では国民の基本的なニーズがほぼ満たされているため幸福と感じる」「収入は幸福と密接な関係があるものの心理的に得られる満足感や社会との関わりも幸福のカギになっている。」なるほど平穏に人間らしい生活をすることができ将来に不安が少ないということは生きる上での精神的な余裕と安心といった希望を生みます。これはまさに憲法が謳う生存権や平和的生存権が充足されているともいえそうですが、では我が国の現状はどうでしょうか?年金・医療・介護といった重要問題が時々の政権により転々として混迷を極めています。就職難やワーキングプアといった状況に加え、原発事故による大惨事を経験して平和的生存という点でも重大な岐路に立たされています。こうした一見バラバラの問題は連鎖、増幅しながら次第に国に対する不信や不安といったマイナスの要素を生んで悪循環に陥ります。実は日本は1997年から、自殺者が3万人を超えています。これは交通事故による死者数(5000人前後)をはるかに超す深刻で異常な事態でしょう。今年の日弁連人権擁護大会では自死問題対策が重要なテーマとなっていますし、各県の弁護士会でも取り組みがおこなわれています。こうした具体的な対策はもちろん重要です。ですがもっと根本的な点から、もし不信、不安、社会からの孤立や疎外という地雷がいたるところに埋まっていたとしたら、人は将来に希望をもって歩んでいくことはできないでしょう。その歩みの中には子を生み育てるという最も尊い営みも含まれているわけです。今いちど「幸福」とは何だろう?ということを考えてみると、それは憲法が謳う基本的人権の尊重というものを別の角度から見たものともいえそうです。

紙面について

特集
「幼保一体化」政策に反対!保育がサービス業となり、保育格差を生む
発行
2012年8月
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東風 第25号
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