巻頭言
暑中お見舞い申し上げます
夏空がまぶしく感じられる季節となりました。皆さま、お変わりありませんか。
この東風が皆さまのお手元に届くのは七夕の頃でしょうか。おり姫星とひこ星が1年に1度、天の川でデートするという粋な習俗を持つ我が国には憲法24条があります。
男性と女性がそれぞれ対等平等な人格の持ち主として認め合い、尊重し合う。そして互いを大切な人と認め、求めあう。それを愛と呼ぶなら、それのみが男性と女性の結びつきの理由になる。憲法24条はそんなロマンティックな規定です。男性と女性ということにこだわらなければ、この規定は要するに、人は他人から自分を認め、尊重されることで喜びを感じ、生きがいを感じるよね、だから家庭も含めてお互いを認め合い、尊重し合う社会を作って行こうよということを言った規定だと思います。そして、恋愛、結婚、家庭生活という日常的な営みの中で、男性と女性、人と人がお互いを認め合い、尊重し合う実践を日々行うならば、憲法の個人の尊厳と平等の理念は真に社会に根差していく。この規定はそんな形で憲法を支えていると思います。
この憲法24条が目指した社会が今、壊されようとしています。一例がモノのように使い捨てられる非正規労働者や結果を出せないと無能扱いされる正規労働者です。働く者の人格を認めるどころか否定し貶める。憲法24条から見れば信じられない働かせ方が横行しています。人は対等平等ではない、人の価値には違いがあるという考え方がこんな働かせ方の裏側に潜んでいます。この考え方が当たり前になっていくと、憲法は壊れていきます。憲法25条の生存権も憲法9条の戦争放棄も人の価値に違いはないということを前提とした規定だからです。死んでもいい命、殺されてもいい命などこの世にぱありません。こんな働かせ方が横行している現在、安倍政権が生活保護を含めた社会保障を切下げ、憲法9条を変え私たちの国を戦争する国に変えようと動いているのは決して偶然の一致ではないのです。
もうすぐ参議院選挙です。憲法24条の目指す、人がお互いを認め合い、尊重し合う社会は素晴らしいと思いませんか。今から憲法24条が目指す社会を実現するために憲法12条が私たちに求める不断の努力を始めましょうよ。憲法も恋愛も不断の努力ですよね!
紙面について
- 特集
- 仁比弁護士対談 憲法の実現を目指す法曹として、そのためにどう動くか
- 発行
- 2013年8月
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- 東風 第27号