巻頭言
安倍政権が吹聴する「アベノミクス」ですが、この間、私たちの暮らしはどう変わったでしょうか。
相変わらず雇用不安は続いており、所得も上がらず、そのうえ消費税の引き上げも実施されます。年々生活は厳しくなっているというのが実感ではないでしょうか。
なぜ景気が良くなっているという実感が無いのでしょうか。それは、政権が「企業重視」を経済政策の主軸に据えているからです。政府は、企業が儲かれば従業員の給料も増え、消費も加速して景気が良くなると説明しています。しかし、その実態は、政府が対応すべき問題の解決を民間企業に丸投げレ代わりに経済界の言いなりの規制緩和を続けているだけです。例えば、少子高齢化に伴う年金の財源不足という正に国家的な問題について、政府は年金支給開始年齢を引上げることで財源不足を回避し、その間の生活費は民間企業に払わせる(65歳までの継続雇用を義務付ける)という方法を選択していますが、民間企業にこうした負担を負わせた見返りに、政府はかねてから経済界が要望していた規制緩和政策(特に、残業代が発生しない裁量労働制の拡大、限定社員制度の創設、派遣の拡大、解雇規制の大幅緩和や規制撤廃)の実現を標榜するようになりました。こうした経済界主導の規制緩和を進めてきた結果、労働者派遣は拡大し、正社員のイスは少なくなり、非正規雇用は激増しました。そして、どんな条件でも正社員になりたいという心理につけ込み、正社員の名に値しない労働条件で労働者を使い捨てるブラック企業がはびこることになりました。携帯電話のCMで「定額使い放題」というフレーズを聞くことがありますが、ブラック企業は労働者も「定額(=残業代は払わない。給料は低額)、使い放題(=サービス残業は当然。辞めても代わりはいくらでもいる)」と考えています。
ブラック企業に問題があることは明らかですが、こんなものが堂々と社会に存在しているのは政府が経済界の言いなりの歪んだ労働政策を行っているからです。
これを是正させるには、ブラックな働き方をさせると割に合わないこと、つまり、過酷な業務を課して精神疾患に追い込む等ということがあれば裁判で損害賠償を命じられることを徹底的に思い知らせるしかありません。割に合わないと分かれば、経済界が規制緩和を求めることもありません。
皆さんの周りにブラック企業で働いているかもしれない方がいたら、弁護士に相談してみたらいいよとアドバイスしてあげてください。皆で声をあげ、一歩ずつ、きちんとした働き方のできる社会を実現していきましょう。
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- 持続可能な社会の実現、再生可能エネルギーの導入を!
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- 2014年1月
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- 東風 第28号