巻頭言
21世紀初頭の今年、世界湖沼会議が滋賀県で開かれます。
以前、琵琶湖の近くに住んでいました。滋賀県の面積の6分の1を占める母なる湖は伊吹・鈴鹿の山々からの水が集まり、そして瀬田川、宇治川、淀川と名を変えながら大阪湾に注ぐ、近畿近隣1400万人の命の水源。
そんな琵琶湖周辺では、夏の行事といえば「湖水浴」。そう!海じゃないからしょっぱくない!目を開けても平気。日焼けも塩水ほどじゃない。ちゃんと波打ちぎわだって、砂浜だってあるのです。キャンプも花火も釣りもみんな琵琶湖!またきらきらと輝く穏やかな波間にのんびりと帆を浮かべるヨットのさまも風情ゆたかです。
その琵琶湖で、もう15年近く前になると思いますが、どんなに重い障害を持つ子ども達も、豊かに生きていける環境の整備を願って、そして障害の重い子どもが大事にされる世の中こそ、すべての人間が大切にされる社会なのだというメッセージを伝えようと、琵琶湖を人・人・人でとり囲もうというイベントがありました(しかし一口に琵琶湖を囲むといってもそれはそれは琵琶湖はおおきいのだ!)
「抱きしめて!びわ湖」と銘打たれたこの人間の鎖は、湖上の船も参加し、大人も子どもも老人も、車椅子の人達も知的障害を持つ人も精神障害を持つ人たちも、みんなが心ひとつに手をつないで大成功に終わりました。
子ども達の、人間の限りない発達を保障する環境の整備、そしてたった50数年の間に環境破壊で危機に瀕する世界最大級の古代湖「琵琶湖」の為に、私達に今できることは何だろう…。
九州に戻って11回目の夏。諌早湾や有明海からも琵琶湖と同じ悲鳴が聞こえています。
紙面について
- 特集
- 世界各地で続く環境破壊
- 発行
- 2001年8月
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- 東風 第3号