巻頭言
新年あけましておめでとうございます。
今年も小倉東総合法律事務所をよろしくお願いいたします。
さっそくですが、落語の「芝浜」は、みなさん、ご存知のことと思います。
酒に溺れて仕事をしない魚屋が大金入りの財布を拾った。ありがてえ、仕事なんかやめだと祝い酒に酔って寝てしまう。翌朝、女房から魚河岸に行けと言われ、財布の話をすると、お前さん、夢でも見だのかいと叱られる。魚屋は酒のためにあさましい夢を見たのかと深く反省し、断酒をして立ち直った。そして3年後、立派な魚屋の主人として大晦日を迎えた。その口、女房から、実はあれは夢じゃなかったのよ、今のあんたなら人丈夫と財布を出して謝られる。そして酒を勧められる。魚屋は言います。「いや、よそう。また夢になるといけねえ」
この話を聞くと、いつも昭和のバブルを思い出します。敗戦後、過労死という言葉を生み出すくらい必死に働いて、一時は経済大国と呼ばれるまでになったこの国。この国は、そこで酒を飲んでしまったのか、飲まなかったのか。
飲んでしまったからその後のこの国の状態がある。こう考える方が、ある意味、気が楽でしょう。飲んで夢と散ってしまったのだと。しかし、飲まなかったとしたら。実際、多くの人はバブルの前も後も必死に働き続けてきたのではないでしょうか。こう考えると話は少々哲学的になってきます。人間まじめに働くだけではダメなのか。「芝浜」の話の続きはどうなるのかなと。
今年から芝浜に習ってまじめに働こうと思っていたのにうーん、どう生きればいいのかねえ、なんてぼやいていたら、目の前に、トラが現れ、まずは一献と勧めるのです。よかった、これは夢だ。まじめに働いても報われない世界なんてあるはずない。手を伸ばしかけたら、考えずに飲んじまうのかいという声。そこで目が覚めました。
みなさん、答えが分かったら敢えてください。
まずは、今年、まじめに働きます。
良い年になりますように。
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- 子どもたちには「生きる」「育つ」「守られる」「参加する」権利がある―子どもの権利条約
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- 2022年1月
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